先物取引

注目される原油先物価格。投機マネーによる先物取引が世界を動かす

先物取引とは、取引対象を将来のある時期に定められた価格で受け渡す売買契約を結ぶ取引。たとえば、2007年2月の時点で、2007年3月31日に原油1バレルを60ドルで購入する、といった契約を結ぶ取引が先物取引で、これに対し今持っているもの(現物)を現時点の時価で売買する取引を現物取引と呼ぶ。
先物市場では、原油や金、銀などの商品(コモディティ)のほか、為替や日経平均株価などの指標も取引対象とされている。

もともと先物取引は、オプション取引と並んで取引の時点で将来の取引対象の価格を確定することで将来の価格変動に備えるリスクヘッジの手段として発達してきた。たとえば、現在は比較的高値の穀物価格が収穫を迎える頃に値下がりすることを心配する農家は、予め(収穫予定の)穀物を先物市場で売っておけば、「現在の先物価格」による対価を受け取ることができる。その後、先物取引の期限を迎えたら収穫した穀物を受け渡して取引を完結させれば、収穫時期に穀物価格が下落していてもその損失を回避できるわけである(ただし、収穫時に穀物価格が値上がりしていてもその恩恵を受けることはできいない)。
逆に、農産物の値上がりを心配する穀物バイヤーなら、予め先物市場で農産物を買う(実際に商品を仕入れる時に期限を迎える先物取引を行っておく)ことで、現在の取引価格で将来の仕入れ価格を確定させることができる(これに近い効果は、定められた期日に一定価格で商品を買い付ける権利を売買するオプション取引でも得ることはできるが、現物を購入するのが目的なら先物取引の方が効率的)。

ただし、取引時点では商品が受け渡されないため信用リスクが生じる(たとえば、先物取引で収穫予定の穀物を売った農家が、天候不順で予定分の穀物を収穫できなくなり受け渡しが行えなくなるかもしれない)。そのため、先物市場では様々な取引ルールを設けている。また、先物取引においては証拠金を差し入れることで手持ち資金以上の取引を行うことが可能(10万円の証拠金を差し入れ100万円相当の取引を行うなど)になっており、投機取引も盛ん。投機取引の場合は、実際に商品をやり取りせず金銭で売買価格の差額を清算する差金決済も行われている。

特に最近はヘッジファンドなど機関投資家が大規模な先物取引を行うようになり、先物市場の価格が実際に取引される現物市場の価格に影響を与え、原油のように先物市場の価格が価格指標として使われる例もある。
これは、先物価格が現物の時価から乖離して上下すると対象となった商品を割安な現物市場で購入し割高な先物市場で売却する(そして期限が来たら手元の現物を受け渡す)、またはその逆の取引で利益を得られる状態(現物市場と先物市場の裁定取引が可能な状態)になるため、現物価格も先物価格につられて動くため。

個人にとっても先物取引は収益機会が多く証拠金取引による高いレバレッジは魅力だが、取引単位が大きなハイリスク・ハイリターン型の取引であり、リスク管理ができないと思わぬ損失につながりかねない。

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